(平成16年10月)No.54
1000回目の「練供養会式」に参加して

 
 


菩薩姿の私と介添え人の長男

      八田工業株式会社
            取締役社長 隅谷 哲三
 
 
 

 先日は貴重な経験を致しました。と申しますのは、奈良県當麻町の當麻寺で、毎年5月14日に、平安中期から、一千年にわたって続く伝統行事「練供養会式」が営まれます。練供養は、寛弘二年(1005年)に始まったと伝えられ、今年がちょうど、千回目にあたります。

 これは、奈良時代の、右大臣の娘、中将姫が同寺で一夜のうちに、曼荼羅を織り上げ、生きたまま成仏したとの伝承にちなみ、毎年5月14日に実施、境内では、極楽浄土に見たてた、曼荼羅堂と、人間界を表す娑婆堂の間に、木製の橋が架けられ、その上を28面ある菩薩面をつけて、菩薩にふんした人たちが、中将姫を迎えるため、踊りを披露しながら練り歩く行事であります。その菩薩の一人に、小生が選ばれ、大変貴重な経験をさせていただきました。

  この日はとても天気が良く、約一万二千人観光客に見守られ、仏教絵巻の演出に参加させて頂く機会を得ることが出来ました。16時からの行事ですが、14時より衣装を着て、菩薩面をつけて、準備に入ります。菩薩面は、現在使われている中で、最も古い面は、鎌倉時代に作られたもので、約八百年前のものがあり、小生はその菩薩面に当たったのか、試しのつもりで菩薩面を、かぶろうとしたところ、なかなか頭に入らず苦労していましたら、世話人の方が来られて、ゴンゴンと叩いたら、ガバッと入りましたが、今度は、なかなか取れず、どうしたものかと思案しておりましたら、そのまま菩薩面の後ろにある、紐で固定されてしまいました。菩薩面で頭の両サイドが締め付けられ、大変痛く、又この日は天候も良く大変むし暑かったので、菩薩面の中は大変むし暑く、息苦しい為、倒れて迷惑を掛けてはと、必死に耐えて耐えて、えらいことを引き受けたと、反省しきりでした。

 その内、練供養会式が始まり、羽織袴姿の当社の専務(長男)に手を引いてもらって、木製の橋の上を東方の娑婆堂に向かって練り歩き、頭が痛い、暑い、息苦しい、倒れそう、と苦の世界が続 いておりましたが娑婆堂前での儀式が終わり、西方に向かって、西日を浴びながら、曼荼羅堂に向 かって歩き出しますと、なんと、頭の痛いこと、暑く息苦しいこと等より、みるみる内に解き放た -1- れ、また橋の両サイドより手を合わせて見上げている沢山の観光客の真剣な眼差しを、一身に受けているのを菩薩面の小さな穴より見ますと、なんとも不思議な心境を体験することが出来、この練供養会式が、1000年も続いているのが分かる様な気が致しました。

 小生にこの様な貴重な体験をさせて頂いたご縁に感謝致します。有難うございました。

「イタタタタ・・・」
大役を終えて 「ほっ」

 

 
 
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