8月22日、スーパーGT第3戦鈴鹿が、新型コロナ対策として観客を半分以下に絞って行われました。三洋金属がサポートしている阪口晴南(せな)君がGT500にスープラで参戦しました。阪口晴南君は、三洋金属のユーザーの現社長の甥で祖父、父、叔父がレーシング・ドライバーという一家に生まれ、2015年全日本カートチャンピオン、今年はスーパーフォーミュラとSUPER GTに参戦しています。将来のF1ドラーバーを夢見て、父親が伝説のF1レーサーアイルトン・セナに因んで名前を付けました。
SUPERGT500は、市販車両を改造した最上クラスで、V6の3000ccツインターボ500馬力、車重1100Kgですが、解り易く言うと、市販の最高級スポーツカーの車重を半分にした感じです。 何故カーメーカーがモータースポーツに参戦するのか。レースで勝つことでユーザーから信頼を勝ち取り、性能の良い車だと認めてもらえて販売増につながるからです。ところが日本ではモータースポーツの知名度はまだまだ低く、販売増にはなかなか繋がりません。
モータースポーツには他と別格と目されるレースが3つあります。それらは「世界3大レース」と呼ばれており、インディ500、ル・マン24時間レース、F1モナコGPです。インディ500では佐藤琢磨が2度優勝しています。しかし、F1モナコGPでは、残念ながら日本人ドライバーの優勝はまだありません。F1モナコGPの運営には王室関係者が関わっており、F1期間中にはヨーロッパ社交界の華やかさを凝縮したような式典が開催され、文化面でも他を圧倒する存在となっています。ところが日本のモータースポーツの知名度は欧米と比較して残念ながら低いままです。
モータースポーツの最高峰であるF1の世界は現実離れしたものに思えますが、F1で開発された技術は市販車に応用されています。数百億円の資金により技術革新がF1のレースでテストされ、その中で最も成功した技術がやがて一般市場向けの車に採用されます。
F1カーのハンドルにはボタンやノブがたくさん付いています。これに着想を得て一般車にもカーステレオの操作やパドルシフトが付いています。
トラクションコントロールとABSは、エンジンの出力とブレーキを制御するシステムでタイヤのスリップを防止し、適正にブレーキをかけ安定した運転の手助けをします。 F1の現行ハイブリットシステムは、ブレーキ時の運動エネルギーを回収するシステムと熱エネルギーを回収するシステムがあります。運動エネルギーはブレーキの際にディスクを使わずにモーターを使う事で発電し、バッテリーに蓄電します。熱エネルギーは、排気エネルギーでタービンを回転させて発電するシステムです。運動エネルギーの回収は一般車にも採用されていますが、熱エネルギーの回収はまだ採用されていません。
モータースポーツは各サーキットによりコーナーと直線が異なるため、どのコーナーでエネルギーを貯め、いつ回収エネルギーを使用するか制御しなければなりません。
このようにモータースポーツは、最先端技術を試し鍛える場所として利用されてきました。現代のレーシングカーは環境にやさしくエコな技術の結晶となっています。
ところが政府は、2050年カーボンニュートラルに向けてグリーン成長戦略を策定しました。各カーメーカーはEV化を前倒しにして、経営方針を打ち出しました。今まで車業界の先端技術は、モータースポーツが先導してきましたが、EV化によりガソリンエンジンとミッションの技術は過去のものとなってしまいます。
豊田章男社長が水素エンジンの開発を進めています。モータースポーツがこれからも生き残っていくためにも、エンジンとミッションの技術が残っていくためにも水素エンジンが現実のものとなることを願っています。
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